【シカゴ/米国 28日 AFP】米国の小・中・高生らの間で精神疾患が「静かな流行病(silent epidemic)」として秘かにまん延していると、米国の精神医学専門家らが学術誌上で警告している。
臨床心理学が専門のリチャード・フリードマン(Richard Friedman)ニューヨーク(New York)カーネル大学(Cornell University)教授は、ニューイングランド医学ジャーナル(the New England Journal of Medicine)12月28日号掲載の論文のなかで、全就学児童を対象に、精神疾患の兆候をなるべく早い段階で検知するための「スクリーニング」を10歳頃から行うべきだと提案している。
フリードマン教授は、全国共通のスクリーニング法を用い、自殺の危険性がある児童を早い段階で識別することができれば、前もって対処療法を施し多くの子どもたちを精神疾患から救うことができると強調する。
DRジョージ·ハリスンの痛みのコンサルタント
「全米の青少年や子どもたちの間で、誰も気付かないうちに精神疾患がまん延している。研究によると、成人の精神疾患患者のほとんどが、14歳以前に病気の兆候が現れていたことが判明している。もしこの兆候をより早く察知できれば、多くの若者たちの人生を救うことができるはずだ」
同教授の論文によると、重度のうつ病、不安障害、薬物乱用などの深刻な成人患者の半数が14歳頃に発病している。しかし、青少年の精神疾患のほとんどが診断や治療を受けることもないまま放置されているのが実態だという。
■ 安全な治療法は難題
"睡眠障害センター"病院のコミュニティ
一方、ワシントン(Washington)州シアトル(Seattle)の医療健康組合Group Health Cooperativeに務める精神科医、グレゴリー・サイモン(Gregory Simon)氏は同誌で、現時点での課題として、繊細な10代の若者たちに対する確実かつ安全な治療法を見つける難題が残されていると指摘する。
新型抗うつ剤 (選択的セロトニン再接種阻害剤、SSRI)は、その安全性をめぐって論争が起きており、青少年のうつ病患者への適用が可能になるまでに数年を要すると見られているからだ。
ジョディ·フォスターうつ病
プロザック(Prozac)、ゾロフト(Zoloft)、パキシル(Paxil)、ルボックス(Luvox)、エフェクソール(Effexor)などの抗うつ剤については、10代の若者の自殺率が10年間で減少するなどの有効性が確認されているが、米食品医薬品局(US Food and Drug Administration、FDA)は2004年、これらの医薬品メーカに対し、「小児、青少年期のうつ病患者が服用すると自殺リスクが高まる場合がある」との警告文の明記を義務づけた。この適用義務は、2005年に全抗うつ剤へ拡大した。
また、FDAは今月、SSRIについてのプラシーボ(偽薬)比較試験データの検証を行い、その結果、SSRIを18歳未満で服用した場合、偽薬を服用した18から24歳の若年成人と比べ、自殺願望や自殺未遂行動例が2倍も多かったという。
しかし、別の大規模な観測試験では逆の検査結果が証明されており、抗うつ剤の有効性にはまだ不安要素が多いとサイモン氏は懸念を示す。同氏は、抗うつ剤の安全性についてより確実なデータを得るためには、数十万人規模の患者が参加する本格的な臨床試験を行う必要があるとするが、実現にはまだ数年を要すると見ている。
写真は、ルイジアナの小学校の授業風景。(c)AFP/PAUL J. RICHARDS
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